国籍も性別も年齢も関係なく,同じ目標に向かうスタッフとして働いています ~日立GLSにおける多様性の現在地~

日立グローバルライフソリューションズ(以降,日立GLS)の栃木事業所は,1945年1月,日立製作所栃木工場として設立され,1946年の冷蔵庫生産をはじめに,約80年に亘り,冷熱製品の開発・生産を手掛けてきました。同事業所の特長として,自動化およびデジタル化を軸とした「スマート工場化」が挙げられます。特に冷蔵庫の生産ラインは自動化によって効率化され,直近3年間で約30%の向上が見られました(2024年11月時点)。職場では,さまざまな国籍の従業員が働いており,多様な人財が安全・安心に働ける職場づくりに積極的に取り組んでいます。
今回は,実際に現場で活躍されているスタッフと,それぞれの上長に参加いただき,職場での様子ややりがい,今後の目標などについてお話をうかがいました。
さまざまなルーツを持つ人たちが互いに理解し合いながら働く明るい現場
――本日はご参加いただき,ありがとうございます。はじめに自己紹介をお願いします。
マラトエス 高山 イネス(以下・イネス):私はペルーで生まれ,1987年に兄が日本に移住したことをきっかけに,3年後の1990年,母と一緒に日本に移住しました。当時は17歳で,日本語は全く分からず,また,環境も整っていなかったので,いろいろ大変でした。18歳で結婚をして,子どもが3人生まれ,専業主婦として暮らしていましたが,2011年,子どもたちが高校に進学したタイミングで,ペルー人の友人から日立の仕事を紹介されて,働くことにしました。以来,14年間,ずっと栃木事業所で働いています。

イバリエントス 若林 リカ(以下・リカ):私は,生まれたときから日本に住んでいます。母が日立で働いており,18歳のときに「一緒に働かないか」と誘われて,日立で働き始めました。今年で12年目で,今でも母と同じ現場で働いています。担当しているのは,冷蔵庫に品質表示板を貼る作業です。冷蔵庫の扉の中にある,製造番号や型式,シリアルナンバーなどが書かれたもので,シリアルナンバーは一台一台違うので,すべての冷蔵庫に貼り付けていきます。

イネス:私は冷蔵庫の内側に部品を付ける作業を担当しています。基本はライン作業で,ラインのなかで部品取付を行うほか,工程の最終検査員の役割も担っています。つまり,1つのラインのメインリーダーとして最終点検も任されているということです。それから,不良が見つかったときは手直しもしています。
――手直しというのは,具体的にどんなことですか。
折田:彼女が担当している「手直し」とは,修復作業というものです。ラインのなかで,内箱変形や成形不良など不良が見つかると,それらを修復する役割です。修復作業はいろいろありますが,難しいものだと技術を習得するまで3年ほどかかるものもあります。失敗を繰り返し,徐々に覚えていくという,経験がものをいう仕事です。イネスさんはその技術を身につけています。
――お2人の他にも,いろいろな国の方が働いていらっしゃるようですが,会話はすべて日本語ですか?
イネス:職場ではだいたい日本語ですが,簡単な言葉で確認したあとは,英語や自分の母国語を使う場合もあります。私はペルー人同士であればスペイン語で話しますし,ほかにも,ちょっと似ている言語はだいたい分かるので,そういう場合はコミュニケーションを手伝う場合もあります。たとえば,女性は,女性特有の事情で体調が悪くなることもありますが,男性に「お腹が痛いので帰ります」とは,なかなか恥ずかしくて言えません。「どうして?」と聞かれるのも嫌ですし。そういうときは,私やリカさんがうまく伝えるようにしています。皆さんには安心だと言ってもらえています。
――日本語が分からない方,母国語しか話せない方などは,日本語も分かるし,共通の言語も知っているという存在は,とても心強いでしょうね。
折田:昔は,前工程のところには男性が多かったのですが,そこにも今は女性が増えています。女性にできる仕事の幅が広がったことと,作業工程が改善され,女性でもできる作業が増えたこともあり,とても助かっています。
イネス:私はいろいろな仕事を担当しているので,女性たちから「イネスさんみたいになりたい」と言ってもらえて,それはとてもうれしいので,頑張っています。
――なるほど。イネスさんのように,言葉も分かり,仕事もできる人は皆さんが憧れる,目標になる女性ですし,励みになりますね。うかがっていると,いろいろな母語の方がいるようで,上長さんも大変ですね。
持箸:はい,ただ私の場合,妻が日系アルゼンチン人なのでスペイン語は3割ぐらい分かります。家では,妻と娘がよくスペイン語で話していますが,そこに割り込んで「お父さんも分かっているぞ」と言ったりします(笑)。ですから職場のスペイン語の会話もある程度は理解することができます。
――イネスさんは来日された当初,日本語が分からなかったとおっしゃっていましたが,日本語はどうやって覚えたのですか。
イネス:若いときは生活が苦しくて学校に行けなかったので,自分で辞書を買って,会話で聞いた言葉をその都度辞書で引いて,意味を理解する,ということを毎日繰り返していました。それで1か月ぐらいしたら,なんとなく日本語が話せるようになっていました。辞書はスペイン語と日本語のものですが,日本語にはローマ字はなくて,小さな漢字もたくさん書かれていたので,その意味も調べて,漢字を書く練習も一緒にしました。そうやって自力で習得しました。会話はテレビドラマを見て覚えましたね。子どもを産んでからは,子どもたちが小学校で習ったことを家で一緒になって勉強しました。子どもたちのためでもあったので。平仮名とカタカナは今でも読み書きできますし,漢字も,よく出てくるものや簡単なものは読めます。でも,結構忘れたものも多いですよ(笑)。子どもたちは,学校で日本語と英語は習うので,家では私がスペイン語を教えました。やはりスペイン語も覚えてほしかったので。おかげで,今では3か国語が話せています。
リカ:私の母も,日本に来たばかりのとき,本当に日本語が分からなくて,毎日泣いていたと言っていました。どうやって覚えたのか聞いたら,やはりテレビを見て,会話などをだんだん覚えたと言っていました。
職場以外でも親交を深めることが働くモチベーションアップにつながっている
――では,仕事以外のことも教えてください。職場の仲間同士でレクリエーションすることなどはありますか?
折田:事業所内でイベントがあって,ソフトボール大会などがあるのですが,参加したいという声が上がり,職場でチームを作りました。イネスさんも選手として頑張っていますよ。ほかには,町のテニスコートを借りてテニスをやることもあり,職場外でも仲良く楽しんでいます。
イネス:最近は,仕事が終わったらすぐ「ソフトボールの練習をするよ」とみんなに声をかけて,大会に向けて頑張って練習しています。ほかにはサッカーもやりますよ。みんなでスポーツをするのは楽しいですね。
リカ:私は同じラインの人たちと一緒に,仕事終わりにご飯を食べに行ったり,飲みに行ったりしています。フィリピンの人たちと集まるときは,フィリピン料理のお店に行くこともあります。そういうときは,タガログ語で会話することが多いですね。私は日本生まれなので,最初はタガログ語を話せなかったのですが,親がずっと話しているのを聞いているうちに,自然に覚えました。
折田:今週末には会社の恒例イベント「ビアパーティ」が開催されます。家族も含めて大勢の人が集まります。社内全ての従業員が参加しますので,皆とても楽しみにしています。毎年,わいわい楽しみ親睦を深めています。
――休みの日はどんなことをして過ごされていますか?
イネス:私はボクシングが趣味で,休日はボクシングの練習に行って,そのあと,家族たちとご飯を食べに行ったり,遊びに行ったりしています。だから正直,平日よりも休日の方が忙しいです(笑)。平日も1週間に2~3回は,30~40分ぐらい,トレーニングをしていますが,それは全然大変じゃないです。無心でトレーニングをすることでリフレッシュになり,仕事の疲れも吹き飛びますから。元気になるためにも運動をすることは大事です。
リカ:私は趣味で熱帯魚や金魚を飼っていて,休日はそのお世話をしています。水替え,水槽の掃除,水草の植え替えなどです。水槽は120cmと60cmの2個あって,大きい水槽では金魚,小さい水槽ではグッピーなどの熱帯魚を飼っています。見ていると本当に癒されます。先日は姪っ子を連れて茨城県の水族館に行ってきました。
みんなの目標になれるよう,組長をめざして頑張ります!
――休日も充実しているのですね。では,将来はどんなふうになりたいのか,夢などあれば教えてください。
イネス:いろいろありますが,仕事の関係だと,手直し・修理の仕事が好きなので,その専門家になりたいですね。そして一生懸命仕事をして,いつかは組長になりたいです。
――それは素晴らしい目標ですね! 組長になるとどんな仕事が増えるのですか。
イネス:組長の仕事で一番大事なのは,安全のルールを徹底させることだと思います。職場での指導は今もやっています。ラインが止まっていても,周囲を掃除したり,部品を片付けたり,やることはたくさんあります。ここでは会社のルールを守らなくてはいけません。それをちゃんと教えるようにしています。
――文化的な背景が違う人に日本のルールを守ってもらうためには,どうやって教えるのですか。
イネス:たとえば,ただ「ルールを守って」と言うのではなくて,「ラインが止まっているときは,周囲を見てみましょう。部品が落ちていて,もしそれを踏んだらケガをしますね。自分も仲間も危ないので,片付けるようにしてください」などと,丁寧に教えます。それを毎日毎日繰り返し言って,最後は「お願いしますね」と言います。
――すごく大事なお仕事ですね。ぜひ,組長になって,皆さんのお手本になってください。リカさんは,将来の夢はいかがですか。
リカ:よく周りの人に「英語もできるでしょう」と言われるんですが,実は私,英語は全然話せないのです。そういうイメージを持たれているので,英語も覚えたいなと思っています。ときどき,英語しか話せない人が職場に配属されてくることもあるのですが,そういうとき,英語ができるとかっこいいし(笑),世界で幅広く使われている言語でもあるので,身に付けたらきっと便利だと思います。
誰もが働きやすい現場をつくるため双方向のコミュニケーションを大切にしたい
――では,上長の方にもおうかがいします。職場にはお2人以外にも,さまざまなバックグラウンドの方がいらっしゃいますが,みんなが元気ではつらつとして仕事に取り組めるように,何か心がけていることはありますか?
折田:一番大事なことは作業環境全般を整えることだと思っています。そして,こちらから発信するだけではなく,相手の意見をちゃんと聞くことも大事だと思います。さらに意見が出てきて,そこからコミュニケーションが広がって,どんどん良い方向に向かいます。一方的に言われるだけでは萎縮しちゃうこともあるので,そこは気を付けたいですね。
持箸:私も一緒です。やはり働きやすい環境をつくることと,意見を取り入れて直していくことですね。安全面のことでも,巡視や見回りしたときに「ここをこうした方が良いんじゃない?」と提案があれば,試してみるようにしています。作業者は今までやっていたことを変えられると抵抗しがちですが,少しの間やってみると,「ああ,確かにこっちの方が良かったな」ということがあるので,現場とも調整しながら意見を取り入れていけば相乗効果が生まれて良くなっていきます。現場仕事なので,もし間違えたとしても取り戻すことはできるので,まずはやってみることが大事だと思っています。
――チーム同士の全員でミーティングをすることもありますか。
持箸:製造部で隔週,品質ミーティングと安全ミーティングを行っています。15分ほどですが,その場でアンケートをとって,改善点などについて意見を出してもらいます。意見が出れば,すぐに取り入れて,その場でみんなで考えて対策につなげる,という流れをつくり,日々改善しています。
イネス:ここの職場は意見を聞いてくれるし,とても言いやすい環境なので,すごくありがたいです。
――安全衛生の気遣いはものづくりの現場では非常に大事だと思いますが,どのように指導されていますか。
持箸:新しい機械を導入したときなど,安全に関する掲示物はなるべく早く掲示しなくてはなりません。その場合は,専門の通訳が1人常駐しているので,その人にお願いします。数カ国語ができる人なので,文章を渡すと,その場で訳して掲示物を作ってくれます。タイムリーにやらないといけないので,そこは助かっています。先日も,ある外国人が,税金問題について組長に質問してきたんですが,英語で話していてもよく分からなくて,その人が分かる言語の通訳の人を呼んできて,相談に乗ってもらいました。込み入った内容だと,お願いすることが多いですね。
イネス:先日も,ある人が「歯が痛い」と言い出して,おろおろしていたら,他の社員リーダーが病院を調べてくれて,行き方も教えてくれました。とても頼りになりますよね。
――うかがっていると,みなさん,家族のように温かい環境で働いていることがわかりました。特に上長が面倒見が良いというイメージですね。
イネス:そうですね。組長は優しいですね。しっかり私たちのことを見てくれているので,みんな,一緒になって頑張ります。職場が楽しいので生産性も上がりますし,モチベーションも上がります。
――いろいろ貴重なお話ありがとうございました。では,最後に,上長からお2人にエールをお願いします。
折田:私は,性別も国籍も,雇用形態も関係なく,全員が同じ目標を持ったスタッフだと思っています。みなさん,まだ遠慮して言っていないこともあると思うので,それをどんどん言ってもらって,職場を良くしていきたいです。ほかの人もイネスさんのようになりたいと思っているということなので,ぜひ高みをめざして,意見も遠慮せずに言ってもらって,これからもっと活躍してほしいですね。
持箸:私も,入社したときから外国人が常に周りにいたし,家に帰ってもいるので(笑),こういうインタビューを受けると,「何が知りたいのかな」と関心があります。いろいろな人がいるのが私にとっては普通のことなんです。以前,事業所長とお話しする機会があったとき,「海外にルーツを持つ方がリーダークラスになってくれれば,私が後進の育成に力を発揮できた証になるので,頑張っていきたい」と話したことがあります。2人が頑張って,組長やリーダーになってくれれば,私の夢が1つ叶うので,今後も精進してもらいたいと思っています。
イネス/リカ:頑張ります。どうもありがとうございます。
日立グローバルライフソリューションズ栃木事業所
社員数:約600名 ※2025年3月31日現在
折田組・持箸組:社員および派遣を含めて全体の過半数が外国籍の従業員。
アジア,中南米を中心とした様々な国の方が働いている。






