
成長する子どもへ
王子様は待たないで。幸せは自分で取りに行ってください
小林昨今、シングルマザーの増加、それに伴う教育への影響があるのではないかと言われていますけれども、その点についてはどのようにお考えですか?
西原うちの田舎の高知県も、貧困とシングルマザー率がすごく高くて、その割に勉強させるという意識が無いんですね。親が疲れちゃてるから、だから手に職をつけるというのがうちの田舎の合言葉だったんですよ。公務員さんが一番の職業で、ほかはパン屋さんになるとか、大工になるとか、看護師さんになるとか。中学校くらいから看護学校に行くんだという手堅い子達が増えている。だからうちの田舎は、悲しいことにサッカー選手になるとか、宇宙飛行士になるなんて子は誰もいないのね。
小林どういう夢を語るんですか?
西原夢というのは手堅い将来の事を言うのであって、決して現実で手に入らない物は言わない。だから夢を語れるのはすごく大事なこと。とにかく私は貧困をなくすためには、女が働くしかないと思っているんですよ。世界中の貧困が母子家庭なんですよ。何でかというと子どもがいるから働けないんだもん。男は逃げた。それなのに男だけは誰にも責められなくて女だけが責められるんですよね。絶対にこの男がお金を持って来てくれると思って信じて、あてが外れた女達なんですね。うちの田舎は9割がた、養育費もらってなかったです。何でかというと養育費をくれるような男はそもそも離婚にならないです。(逃げていったのは)みんな養育費も払えない男なんです。
小林そういったご経験もあって、西原さんからはいつも「自分の幸せは人任せにしない」というメッセージが伝わってきます。昨年ベストセラーになった西原さんの著書「女の子が生きていくときに、覚えていてほしいこと」、この中で今ご紹介頂いた言葉にもあるのですが、私がこれは皆さんにご紹介したいなと言う言葉があったので30秒程お時間を頂いてご紹介してもよろしいですか?
西原はい。ありがとうございます。
小林ではお付き合いを頂きたいと思います。西原さんの「女の子が生きていくときに、覚えていてほしいこと」から抜粋いたしました。
人って失敗からも沢山学べるからどんどん失敗をしてください。うまくいかないことがあったっていい。でもそれでくさらない女性であってほしい。そう願っています。結婚はしてもしなくてもいい。どちらでもいいから無職で子どもは育てないでね。それだけはお願いね。どんな時でも次の一手は自分で考えて自分が選ぶ。王子様は待たないで。幸せは自分で取りに行ってください。
ここのパートも本当にジーンときたんですよね、分かっていてもこの言葉というのはなかなか書けない言葉だなと思ったんですね。
西原私が失敗しまくったので。だって私、大学受かったとき無職の男と同棲するということをもうやらかしてるのね。自分がやった失敗は絶対娘もやるから、娘も反抗期に入ったのでとにかく失敗する前にちゃんと書いて、今これを口で言うと怒りだすから書いとかなくちゃと思って。
小林言葉って伝えられないんだったら活字で残すという方法もありますよね。
西原貧困と暴力と嘘の中に落ちて行ったら助からないんですよ。男の人でもそうですが、人生もうやり直しきかなくなった年に気がついても遅い。とはいえ絶対失敗はするから、そのときにどうやって立ち直るかということです。ダメ男と付き合っていると彼はいつか変わってくれるもしれないって。変わりません。絶対に変わりません。それをどうしても娘に言っておきたくてこんな本に書きました。
小林娘さんは読まれたんですか?
西原分からない。聞いてない。
西原(異性で)1回苦労したくらいの時期が、いいのかなと。
小林複雑な思いがありますよね。

「卒母」後の子どもとの距離
私はここにいる。ドアはいつでも開いてるよ
小林昨年惜しまれながら連載を終了された「毎日かあさん」、その理由に「卒母」をあげていらっしゃいました。この卒母についてお嬢様が16歳になったタイミングに設定されたのはどのような思いからだったのでしょうか。
西原いや、純粋に反抗期が始まったのでキンキン怒っている女の子に何話しかけても絶対無駄。あと、女の子が本気で嘘ついたら敵わないですよ。男の子はすぐばれるけど、女の子が嘘ついて外に出始めたら何言ってもだめなので腹くくって、ちゃんと信じているから遅くなるなら連絡をください、と言うくらいしかやりようがない。どこ行ってたの、何してたのと携帯見るのは逆効果なので。待ってるしか無いな、私は後方支援です、みたいな。息子も16歳で(留学に)行ったので、そうなるとお母さんって重いじゃん。愛情たっぷりの何とかは「超ウゼ」とか言われるから、もうやめようと思って、だから大人どうしが一緒に暮らしているくらいの感覚でいこうと決めましたね。“前カレ”みたいな関係がちょうどいいかなと思っています。女の人、前カレに冷たいよね。新しい男の人できるとね。新しいカバン買うと、前のカバンに非常に冷たい仕打ちをするよね(笑)。
小林卒母をされた後に何か変化はあったのですか?
西原私息子に教わったんですよ。「お母さん、アメリカは日本みたいに反抗期無いよ」って。独立独歩をものすごく大事にして早くに個室を持たしているから干渉しない。あと家が広いから顔つき合せてギャーギャー言わない。お母さんは洗濯しないしご飯も作らない。朝ご飯とお弁当は自分で作らないといけない、洗濯も掃除も自分。留学前から留学のカウンセラーがつくんですが、その人からも「日本のお母さんはちょっとやり過ぎなんです。世界中で日本のお母さんくらい子どもに手をかけている人はいないからね。君たち動いて放っておかれたと怒らないでね、自分のことは全部自分だから」って教わって。これはいいこと聞いたなと。そんなに一緒にいないようにすればいいんだと、彼氏も旦那もあんまり一緒にいると喧嘩になってくるからね。週に1回くらいなら、娘も一緒に焼き肉を食べに来るし。
小林焼き肉なら?
西原焼き肉なら来るので。だいたい週1回、ひまそうなときに「焼き肉来る?」とLINE出すと、了解の「了」が来る。そうやってカルビ食べてます。
小林やっぱり親子であっても、距離が大事なんですね。
西原大事だと思います。距離ありすぎだけど。
小林先程、本のお話をご紹介したんですけれど、その中で「私はここにいる。ドアはいつでも開いてるよ」と書いてありました。やはり卒母しても、どんなに距離が離れていても静かに温かく見守っているんだよ、と伝えることは大切でしょうか。
西原もし資格取りたかったら、そのためのお金は全部出すからねと、そういうことを言ってます。(家から)出たいんだったら出てもいいよと。私の周りで、全く売れないバンドマンと家出しちゃった子がいるんですけど、1年2年したら(その子は)帰って来ているんです。それで看護学校に行き直している。その子のお母さんとみんなで酒飲みながら「帰って来る力のある子どもに育てたんだよ、お母さん立派だったよ」「普通は帰って来ないよ、良かったね」って、それを酒のつまみにしたり。帰って来るってすごく力がいるんですよ、離婚と一緒で。だからそういう力を持ってる子になってほしいなと。成功すればどんどん沖に行って世界に行っちゃうかもしれない。順風に帆を張って沖に行く子はもちろんいいんだけれど、だめだったらいつ帰ってきてもやり直せる場所は私が整えていますという、そういう意味ですね。