領域開拓型研究
「パンデミックへのレジリエンス向上のためのアジアにおける下水疫学調査の実装」

バンコクでのシンポジウム

シンポジウムでの集合写真

ワークショップ

バンコクの下水処理場の見学

チュラロンコン大学での実験トレーニング

チュラロンコン大学での実験トレーニング
研究概要
研究期間:2021年12月〜2024年11月
本研究プロジェクトは、日本、インドネシア、ネパール、フィリピン、タイおよびベトナムの6ヶ国を対象に、下水疫学調査等の革新的な技術を用いて、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の病因である新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)とその変異株を監視し、その成果を意思決定者と共有するシステムを開発・実装することを目的とする。本プロジェクトは、技術やガバナンスを含む包括的な枠組みを構築することで、アジアのさまざまなコミュニティのレジリエンス向上に貢献するとともに、グローバルな目標の達成にも寄与する。
本プロジェクトの目標を達成するため、以下の3つの研究テーマに取り組む。
- サンプリングおよび分析
日本グループは、パンデミック発生当初からSARS-CoV-2の分析方法を検討し、定量PCRを用いた検出法の確立に成功している。この検出法とそのノウハウを他のグループに共有し、各グループがそれぞれの国でSARSCoV-2を測定できるようにする。調査地点は、各国の文化、環境、社会・政治的な背景を考慮して決定する。
- モニタリング技術の開発および評価
COVID-19 の糞口感染によって伝播する可能性は極めて限られるものの、将来、糞口感染リスクの高い「疾病X」を引き起こす病原体が発生した場合に備えるためにも、サンプリングや分析時に下水との物理的接触を可能な限り少なくすることが望まれる。そこで、サンプリング時の物理的リスクを低減しつつ、遠隔かつリアルタイムで下水中の病原体をモニタリングすることを目的に、バイオセンサーの開発と試験に取り組む。
- 将来のパンデミックへの適用
SARS-CoV-2とその変異株、その他の関連する病原体を対象に、各コミュニティでの感染症の流行状況を考慮しながら分析を実施する。下水疫学調査を実施した際に得られた教訓や直面した課題は、本プロジェクトの参加国間で共有されるのみならず、集合的な知識を集約した後、対象国以外の国際社会への共有も検討する。本プロジェクトは、将来のパンデミックのリスクの軽減をめざし、地域的および国際的な議論や政策立案に貢献するものである。
研究代表者
山梨大学 大学院総合研究部附属 国際流域環境研究センター
教授 原本 英司
2007年3月に東京大学大学院博士課程を修了し、博士(工学)の学位を取得。同年4月より日本学術振興会特別研究員(PD)として国立保健医療科学院にて研究に従事。2008年9月に山梨大学に助教として着任、2015年に准教授、2020年に教授となり現在に至る。専門は環境工学・下水疫学。